楽しいだけじゃダメかしら
本の仕事をしていた頃、相談を受けることがよくあった。
子どもが本を読まない どうしたらよいか
仕事以外で聞いてくる知り合いなどには、
親に本を読む習慣がないんだから仕方がない、と思うところを正直に答えていた。
もちろん、家の人が本を読まなくても、本好きな子はいるけれど。
そのことを覚えていた知人から連絡を受けた。
なんでも著名な方がテレビで同じことを言っているのを聞いて
本当だったんだ、と思ったという。
何十年も経って、私の言っていたことは信用されたらしい。
小さい子を持つ親で、この手の質問をしてくる人は、
語彙力や読解力といったものが、子どもに身につくことを期待している。
この質問をしてきた人の子どもで、本好きに育った子がいた。
子どもが大きくなると、その親は今度は
勉強しないで本ばかり読んで困る、と言いだした。
本を読んでいる間、行ったことのない外国に行き、使えないはずの魔法を使い、
生まれていない時代の動物たちと出会う。
本は、心を動かす遊びだと思う。体を動かす遊びがあるのと同じように、子どもには必要なこと。
本を読んで楽しかった、それだけで良いんじゃないかと思う。
なぜ楽しいと思ったのか、それを説明するのは勉強の時だけで良いんじゃないかと思う。